2006年1月21日(土)にNHK大阪ホールで催された「豊後掾」の公演は盛況のうちに終了しました。予想をはるかに上回る数多くの方々の御来駕を賜りましたことは望外の喜びであり、心から厚く御礼を申し上げます。
なお、本公演のもようは4月1日(土)午後6時より、NHK・BS2におきまして全国放送されました。
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飛鳥左近 浜畑賢吉 |
関西楽劇フェスティバル協議会が主催する「上方ルネッサンス 楽劇の祭典」は、能・歌舞伎・文楽というは日本を代表する三大楽劇を基軸とする音楽祭であり、古典楽劇の祭典をとおして、日本の伝統芸能の本質を原点に立ち返って探究するとともに、他方ではそれら古典楽劇の現代的展開を構想していくことを課題としています。
当協議会では本年度「楽劇の祭典」の特別公演として、来年1月21日(土)にNHK大阪ホールにおきまして、今日、歌舞伎音楽として広く上演されています常磐津・清元といった音曲の源流をなす、宮古路豊後掾の豊後節浄瑠璃を題材とする現代版歌舞伎『豊後掾Bungo nojo― 享保心中譚 ―』(全二幕)を上演します。これは関西楽劇フェスティバル協議会の独自制作になるオリジナル作品であり、本邦初演となります。
本作品は、徳川吉宗の享保改革と豊後節の上演をめぐる軋轢の史実をふまえて構成されたドラマであり、政治と芸術との葛藤、民衆の集合心性の歴史的な役割を描き出そうとするものです。
藤原寿豊 古澤侑峯 |
本作品は上演形式としては、通常の演劇形式を基本としていますが、また随所に音楽的要素を伴っており、楽劇的な性格をも備えています。ことに劇中において、享保20年(1735)に江戸中村座で上演された心中浄瑠璃「睦月連理玉椿(※)」を再現することになりますが、人間国宝常磐津一巴太夫師によって復曲された豊後節に基づく「睦月連理玉椿」(道行)の270年ぶりの上演は、本作品のハイライトをなしています。一巴師の豊後浄瑠璃と二人の舞踊家によって演じられる艶やかにして華麗な舞台は、歌舞伎・浄瑠璃ファンにとって垂涎の思いをなす催しとなることでありましょう。
※「玉椿」は正式には一文字で「椿」の下に「心」。 ただし大漢和には見えず。
さらに本作品の演出を担当するマンフレート・フープリヒト氏は、ドイツ・ドレスデンの出身でヨーロッパ、アメリカ各地の劇場で演出に携わられるとともに、ワーグナー楽劇のメッカであるドイツ・バイロイト祝祭歌劇場においても演出を手がけてこられた経歴をもつ第一級の演出家です。
このような方に、日本固有の音曲に基づく作品にして、これまた日本文化に深く根ざした「心中」というテーマを有する作品を演出していただく機会を得ましたことは、私どもの深く喜びとするところであり、日本の伝統的な文化・芸術をグローバルな観点において再創造していくことを理念とする当協議会の本旨にかなうものと考える次第です。
さまざまな意味において話題性に富み、学術的・芸術的にも意義深い本作品であります。ぜひ万障お繰り合わせのうえ御来駕たまわりますよう、心からお待ち申し上げております。
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2005年11月1日 |
関西楽劇フェスティバル協議会 会長 山 折 哲 雄 |
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【開 催 要 項】
公演日時 | : | 2006年1月21日(土)19時 開演(18時 開場、21時半 終演) |
公演会場 | : | NHK大阪ホール(地下鉄谷町線谷町4丁目下車、徒歩5分) |
作・構成 | | 笠谷 和比古 |
音 楽 | | 森 洋久 / 浅野五朗 |
豊 後 節 | | 常磐津一巴太夫(人間国宝) |
演 出 | | マンフレート・フープリヒト |
出 演 | | 浜畑賢吉(宮古路豊後掾/徳川吉宗(二役))、 飛鳥左近(遊女若菜)、 【劇中劇】常磐津一巴太夫、藤原寿豊、古澤侑峯、他 |
制 作 | | 関西楽劇フェスティバル協議会 |
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[作品概要と趣旨]
時代は享保年間、八代将軍徳川吉宗の治世下。京下りの浄瑠璃太夫、宮古路豊後掾は豊後節と呼ばれる、男女の人情の機微を艶やかに歌いこんだまったく新しい音曲を創始し大いに人気を博した。ことに男女の心中恋愛をテーマとした「睦月連理玉椿(※)」という彼の創作浄瑠璃は大評判をとったが、おりしも江戸は将軍吉宗の享保改革のただ中にあって、心中物の劇場上演は固く御法度という状態におかれていた。
しかし禁止された筈の豊後節「睦月連理玉椿」は、江戸中村座で上演されて大好評を博することとなる。これには江戸の町の現場で民衆の声に深く接していて、幕府政治の政策転換の必要を痛感していた江戸町奉行・大岡忠相の奮闘努力が大きくあずかっていた。
しかしながら、いったん解禁された豊後節は江戸の老若男女の心をとらえて異常なまでの熱狂状態を引き起こすこととなり、さらには芝居の世界さながらに不義・密通・駆落ちが横行するなど江戸の町は収拾不能のあり様となることによって一大政治問題へと発展していく。
こうして豊後掾の浄瑠璃に対しては江戸市中における上演停止の措置がとられ、豊後掾は江戸追放の身となる。かれは後事を弟子の文字太夫(のちに常磐津節を創始する常磐津文字太夫)に託して上方にもどろうとする。
豊後掾には、江戸に来てより深い恋仲となった吉原の遊女・若菜があった。豊後掾は江戸追放のその日、若菜と離別の宴をもうけるのであるが、はかない遊女の境涯にある若菜は、今わかれては再びこの世にて豊後掾に会うことは叶うまじと激しく嘆き悲しみ、別れを肯んじえない。
豊後掾は自ら三味線をとって、名残の一節にと「睦月連理玉椿」を語り始める。語るがうちに音曲は高潮し、いつしか現実と虚構との境界は溶けおちて、豊後掾と若菜は劇中の心中道行きの男女二人に変容していく・・・
本作品は、徳川吉宗の享保改革と豊後節の上演をめぐる軋轢の史実をふまえて構成されたドラマであり、政治と芸術との葛藤、民衆の集合心性の歴史的な役割を描き出すものです。
上演形式としては、通常の演劇形式を基本としていますが、随所に音楽的要素を随伴しており、楽劇的な性格を備えています。ことに本作品では、享保20年(1735)に江戸中村座で上演された浄瑠璃芝居「睦月連理玉椿」の心中道行きの場を劇中において再現しますが、人間国宝常磐津一巴太夫師によって復曲された豊後節に基づく「睦月連理玉椿」(道行)の270年ぶりの上演は、本作品中の重要な見せ場となるものです。ぜひ御期待ください。
※「玉椿」は正式には一文字で「椿」の下に「心」。 ただし大漢和には見えず。
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【配 役】
| 宮古路豊後掾 | | 浜畑賢吉 |
宮古路文字太夫 | 白川明彦 |
徳川吉宗 | 浜畑賢吉(二役) |
水原和泉守(老中) | 田中弘史 |
松下右京大夫(老中) | 下元年世 |
坂田讃岐守(老中) | 真田 実 |
遠藤対馬守(老中) | 表 淳夫 |
大岡越前守 | 芝本 正 |
吉原遊女若菜 | 飛鳥左近 |
茶屋の女将 | 紅 萬子 |
幇間 申一 | 三浦隆志 |
禿 ほたる | 舩津有加里 |
稲生下野守 | 南条好輝 |
儒者 太宰春台 | 多賀勝一 |
町人 庄兵衛 | 飛鳥峯治 |
町人 直次郎 | 飛鳥博史 |
女 とよ | 飛鳥 妙 |
女 ふさ | 飛鳥有伯 |
群衆 | 紅 萬子・三浦隆志・飛鳥峯治・飛鳥博史・飛鳥 妙 飛鳥有伯・岩田国大・岡戸太郎・松本 大 秋田奈帆子・杖崎 史・大升友香梨・稲葉千紘 寺坂 麗・梅田 泉・戸田なつ美・奥田貴子 |
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【劇中劇特別出演】
| 舞踊・伊八 | | 藤原寿豊 |
舞踊・おさん | 古澤侑峯 |
豊後掾 | 常磐津一巴太夫(人間国宝) |
文字太夫 | 常磐津巴瑠幸太夫 |
浄瑠璃 | 常磐津三代太夫 |
三味線 | 常磐津都喜蔵 |
上調子 | 常磐津都史 |
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【スタッフ・リスト】
| 作・構成 | | 笠谷 和比古 |
音 楽 | 森 洋久/浅野五朗 |
演 出 | マンフレート・フーブリヒト/浜畑賢吉 |
振 付 | 飛鳥峯王 |
考 証 | 飛鳥珠王 |
監 修 | 竹内道敬 |
舞台監督 | 竹内一秀 |
S A | 矢部 章 |
照 明 | 新田三郎 |
大 道 具 | (有)南海ステージ |
映 像 | 坪井洋一 |
音 響 | 田口和弘 |
音響操作 | T&Crew |
映像操作 | (株)タケナカ |
衣裳・小道具 | 松竹衣裳(株) |
床 山 | (株)丸善かつら |
| (有)川合かつら店 |
| (株)八木源かつら |
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| 主 催 | | 関西楽劇フェスティバル協議会 |
協 力 | 大阪芸術大学、NPO関西舞台文化懇話会 |
制作協力 | 日本舞踊アカデミーASUKA、音景観研究所 |
後 援 | 大阪府、大阪市、京都府、京都市、京都市教育委員会 関西広域連携協議会、大阪21世紀協会、歴史街道推進協議会 |
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